歯科治療の進歩の裏には!

現在の歯科のおける三種の神器はコーンビームCT(CBCT)、マイクロスコープ(治療用顕微鏡)、CAD/CAMです。医科ではお馴染みのCTですが、歯科用のコンパクトなCTが開発され画像診断の精度が上がりました。マイクロスコープは、肉眼では見えないほど小さいところを高倍率で拡大して見ることができ原因を見つけたり、より正確な治療をするために利用されています。CAD/CAMはComputer Aided Design/Computer Aided Manufacturingの略で、コンピュータで義歯の設計製作を支援するシステムです。今まで技術者(歯科技工士)の手作業だったものの多くを機械が作るのです。今のところは、ベテランの歯科技工士が手で作ったオーダーメイドの高品質・高性能の義歯には及ばず、あくまで既製品の域を出ませんが、ここ10年以内(2030年頃までには)で義歯製作はガラッと変わることは間違いありません。そして、その進歩は患者さんの治療のストレスを少なくしてくれるでしょう。
以上の三種の神器の他にも世界中で新しい材料・器械が絶え間なく開発されています。メーカーとしては、ヒット商品の開発に凌ぎを削っていますが、わたし達歯科医が、そのスピードについていけないのが現状です。

医療が進化し続ける中、患者さんとしては、医科も歯科も最新の器械・材料・薬剤・システムで治療を受けた方が安心・安全だと思うのは当然のことだと思います。しかし、ちょっと待ってください!本当に最新設備・材料・薬だから安心・安全医療と言えるでしょうか?最新の医療を受けていても医療事故は減っているとは言えません。どうしてか考えてみてください!

診査・診断・治療はあなたの担当医が行います!器械・材料・システムがあなたの病気を治してくれるのではありません。担当医の経験に基づく診断力と治療技術が病気を治してくれるのです!

歯科の話しに限定しましょう!三種の神器のCTとマイクロスコープにより今まで見えなかったところまで見えることで、より正確に実態を把握することができ診断の精度を上げることができるようになりました。しかし、それを使う歯科医の臨床経験が浅いと今まで見えなかったところが見えることで必要以上の治療をしてしまう、ましてや治療効果が期待できないと判断し抜歯する必要がない歯まで抜歯してしまう、ということにも繋がる場合もあるようです。このように見えすぎることがプラスに働かずマイナスに働くこともあるのです!医科でよく耳にする必要のない手術をしてしまうという医療ミスもそうでしょう。

材料に関しては、審美歯科で世界的に需要が拡大しているジルコニア、各種接着材料、ある種の根管充填材(歯の神経を取った後に詰める材料)などの新しい材料は、再治療が必要になったとき歯に被っているジルコニアクラウン、接着材、根管充填材をきれいに取り除かなければなりません。しかし、きれいに取り除くことは非常に困難で患者さんにも時間的・精神的ストレスを与えることになります。つまり、これらの材料(再治療が困難な材料)を使う歯科医は再治療はしないつもりで使っているようです!しかし、どんなに完璧な治療を行っても10〜20年の間には再治療が必要になることがあります。もし再治療が必要になったら治療を行った歯科医に責任を持ってやってもらってください。これらの再治療は、他の歯科医(当院としても)にとっては非常に時間がかかり難しい再治療のため迷惑な治療なのです。

当院では患者さんとの一生のお付き合いを基本に診療にあたっていますので、治療後10年ほど経過しますと定期健診と自己管理を続けていても再治療が必要になることがあります。その際、再治療の負担が少なくなるように治療方法と材料を考えて治療しております。つまり、決して新しい材料や方法が歯を長持ちさせて安心なものとは言えないのです。
当院では30年以上の臨床経験で培ったノウハウから患者さんに自信を持って提供できる「長持ちする治療」のための方法と材料を選択しています。そのため、あえて新しい材料や方法を使わずに信頼できる従来の材料・方法を使うことが多いのですが、新しい材料・方法が私の今までの成功経験より明らかに勝るときは利用しています。